会社などに雇用されて勤務している労働者は、様々な保険を利用できます。その中に「雇用保険」がありますが、アルバイトを雇っている場合、アルバイトにも雇用保険が適用されるか悩む場合があるかもしれません。アルバイトであっても、特定の条件を満たしているならば雇用保険の加入義務が発生します。この記事では、アルバイトの雇用保険加入のための条件や保険料率についてご紹介します。
雇用保険とは
雇用保険は、雇用されて働いている労働者を守るために設けられている保険で、主に失職時の生活支援として機能します。雇用保険の概要を以下で詳しく解説します。雇用保険の目的
雇用保険制度は、失職・休職した労働者が、再就職・起業などで生活基盤を立て直すまでの支援として給付を受けられる制度です。失業だけでなく、育児や介護などによる休職でも適用されます。
支援内容は基本的な給付に加え、再就職のために知識やスキルを身につけられる職業訓練を受ける際の手当てや、一部の資格取得講座の手当てなどがあります。その他、定年再雇用などによる収入低下に対しても、就労継続できるように給付を受けられます。
雇用保険の種類
雇用保険には様々な種類がありますが、以下で一部を紹介しましょう。
・基本手当
求職中の失業者が安定して生活できるように支給される手当で、「失業手当」と呼ばれることもあります。受給の条件は離職理由により異なり、基本的にはやむを得ない理由であれば条件を満たしやすくなります。
・技能習得手当
基本手当の受給者が、ハローワークの指示により公共職業訓練を受講する際に支給されます。職業訓練の受講日数に応じて支給される「受講手当」と、訓練所に通う交通費として支給される「通所手当」があります。
・教育訓練給付金
厚生労働大臣指定の教育講座を修了した被保険者に支給されます。教育訓練を受講するために支払った費用の一部が対象です。技能習得手当と異なり在職中でも利用できますが、過去3年間で教育訓練給付金を利用していない場合に限ります。
・育児休業給付金
被保険者が1歳、あるいは条件により1歳2ヶ月未満の子どもを育てるために育児休業を取った場合に支給を受けられます。支給額は休業期間により異なり、はじめの6ヶ月間は休業前の給与の67%、6ヶ月以降は50%が支給額です。
雇用保険と労災保険の違い
雇用保険は政府が扱う「強制保険」にあたり、労働者が持っている権利を守るために必ず適用される保険です。「労災保険」と合わせて「労働保険」として扱われています。
雇用保険と労災保険は、保険料の支払いにおいて違いがあります。労災保険は雇用者だけが保険料を支払う一方、雇用保険の保険料は雇用者・労働者双方が支払います。その際、支払額は完全に同額ではなく、雇用者の方が少し多く支払います。
なお、雇用保険料は毎月の給与以外に賞与、通勤手当なども対象です。一方で、役員報酬や出張旅費、休業補償費などは対象になりません。
アルバイトの雇用保険加入は義務?
雇用保険は様々な方法で労働者を守る制度ですが、アルバイトは正社員でないため雇用保険の対象に入らないと考える雇用者もいるかもしれません。しかし、以下で解説する3つの条件を満たしているアルバイトは、雇用保険の加入義務があるため注意しましょう。週に20時間以上の労働時間であること
アルバイトに限らず、雇用保険の加入条件として週20時間以上働いていることが挙げられます。正社員やパートタイムなどでも同様の条件を満たす必要があり、例として1日7時間×週3日勤務しているならば、週に21時間働くことになるため条件を満たします。一方、1日4時間×週4日勤務の場合は週16時間勤務となり条件を満たしません。
なお、勤務時間が週ごとに変動して20時間を超えたり超えなかったりする場合は、1ヶ月単位で考えます。1ヶ月の労働時間が87時間以上であれば、雇用保険への加入が可能です。
31日以上雇用される見込みであること
31日以上の間アルバイトとして雇われる見込みがあることも、雇用保険に入るための条件です。実際に31日間働いたことではなく、最初に仕事をした日から退職までの期間が31日を満たせば該当します。
基本的に1ヶ月以上雇用を続けることが決まっていれば条件を満たすため、短期のアルバイトでなければ高確率で該当すると考えられるでしょう。また、短期契約を繰り返しても該当します。なお、最初の1ヶ月が使用期間であっても31日以上雇用される見込みがあると判断されるため、雇用保険への加入が可能です。
学生でないこと
学生アルバイトは原則として雇用保険に加入できません。雇用保険は失業した労働者が生活を支えられるようにする保険であり、本来学業が本分の学生は退職しても「学業に専念している状態」と扱われて保険の対象外になるのです。
しかし、夜間・通信制・定時制などの学生は、例外として雇用保険の加入対象になります。また、卒業予定の学生で卒業後も同じ会社で勤務予定の場合や、休学中の学生も加入対象です。なお、休学している場合は事実証明のために書類提出が必要です。
雇用保険の保険料
雇用保険料の金額は給与額や業種により変化します。賞与を支給する場合は賞与にも保険料がかかるため注意しましょう。以下では、雇用保険の保険料率と賞与発生時の計算方法を解説します。事業ごとの保険料率
雇用保険の保険料率は業種ごとに異なります。2021年度の雇用保険料率は一般事業で9/1,000、農林水産・清酒製造事業で11/1,000、建設事業で12/1,000です。これらの数値を毎月の給与総額にかければ保険料が算出でき、その1/3を労働者が、2/3を事業主が負担します。
業種別で見てみると、農林水産・清酒製造事業は季節により事業規模が変化しやすく就業状態も安定しないため、保険料率が一般事業より高く設定されています。また、建設事業は建築物ごとに雇用契約を結ぶケースが多いことや独自の助成金が多いことなどにより、こちらも保険料率が一般事業より高く設定されています。
賞与が発生する月の計算方法
会社や月によっては賞与の支給を行う必要があります。賞与に対しても雇用保険料はかかり、賞与総額に雇用保険料率をかけた金額が保険料として引かれます。
なお、健康保険料や介護保険料など、雇用保険以外の社会保険では賞与総額をそのまま使わないため注意が必要です。また、雇用保険料率は年度によって改定される場合があるため、賞与額の決定前にあらかじめ確認しておきましょう。賞与額の決定には、インターネット上で手に入る計算書を利用すると便利です。