製造業と一口に言ってもさまざまな内容の仕事があり、なかには資格がないと担当できない業務も多くあります。資格取得後すぐに実務に生かせるものもあるので、キャリアアップや転職などを見据えて、自分にとって有益な資格を考えてみましょう。この記事では、製造業に関する人気の資格をタイプ別に紹介するとともに、製造業において資格を取得するメリットについて解説します。
加工・整備作業で生かせる資格
製造業ではさまざまな原材料を加工するため、各種加工技術に関する資格を取得できれば業務に役立ちます。また、身近な車を整備するためにも資格が必要です。ここでは製造業の加工作業、
および自動車整備で生かせる資格を紹介します。アーク溶接作業者
金属を火花で溶接するアーク溶接を担当するためには資格が必要です。アーク溶接は非常に多くの作業で使われる溶接方法であり、資格を取得していることで多くの現場・業務で生かせます。アーク溶接作業者の資格試験は、18歳以上であれば誰でも受験可能で、受験者の大半が合格できている資格でもあります。資格には有効期限がないため、更新が不要な点もメリットです。手軽に取得できて長期的に役立つでしょう。
なお、試験の前には、学科・実技を合わせて3日間の講習を受講します。集中して作業方法や注意点などを覚えましょう。
プレス金型取替作業者
金属加工において、プレス機で圧縮して金型に沿った形に加工する作業があります。この作業で生かせる資格が「プレス金型取替作業者」です。当該作業は大怪我をするリスクがあるためメンテナンスや点検が欠かせず、なかでも金型・シャーの刃物などは「プレス金型取替作業者」の資格所持者のみが扱える部品です。18歳以上であれば誰でも資格取得のための講習を受けられ、学科・実技を合わせて10時間の講習を修了したら、修了証が交付されてプレス金型の取り換え作業が可能になります。講習のみ必要で試験はありませんが、資格取得後も5年ごとに講習を受け直すことが推奨されています。
自動車整備士
自動車整備士は、自動車の点検・整備を行います。小規模な点検から緊急時の整備、大規模な分解整備など幅広い整備を行う仕事で、主に自動車整備工場やカーディーラー、ガソリンスタンドなどでの勤務に生かせる資格です。自動車整備士の資格は1級~3級に分かれており、各級は分野ごとにさらに分類されます。1級と2級では実務経験が、3級では特定分野の学歴が受験資格として含まれているため確認しておきましょう。
なお、1級~3級の資格以外に「特殊整備士」という資格もあります。電気装置やタイヤなど特定分野への深い知識が求められる資格で、こちらも取得していると就職などで有利になるでしょう。
運転関連で人気の資格
製造業では、業務上さまざまなものを運ぶ場面があります。小さなフォークリフトから大きなクレーンまで、運転スキルを持っていれば多くの現場で役立つでしょう。ここでは 製造業で活躍できる運転関連の資格を紹介します。フォークリフト運転技能者
倉庫や港湾など、さまざまな場所で使用されているフォークリフトの運転には資格が必要です。多くの製造現場で大量の原料や製品を運ぶためにフォークリフトが使われており、フォークリフトを運転できれば多くの現場で重宝されます。フォークリフトの運転資格は、最大積載量により異なります。1トン以上積める大型のフォークリフトを扱うためには「フォークリフト運転技能講習」を受ける必要があり、講習受講後に試験にも合格しなければなりません。講習は学科・実技を合わせて35時間です。
玉掛作業者
クレーンやデリックなどで重い荷物をつり下げたり外したりする作業を「玉掛け」と呼び、実施には資格が必要です。玉掛けを上手く行えないと荷物が落下して従業員が怪我をする恐れがあり、荷物のつり方や用具選定についてはしっかりとした知識が求められます。具体的には、玉掛けに使用するクレーンの最大つり上げ荷重が1トン以上の場合に、講習の受講が必要です。玉掛作業者資格の講習は18歳以上であれば誰でも受けられて、クレーン・デリックなどの運転技能や玉掛け補助の実務経験があれば、講習内容を短縮できます。短縮がない場合は、3日間かけて合計19時間の講習を受講します。
移動式クレーン運転士
トラッククレーンやクローラークレーンなど、自走して移動できるクレーンにも運転免許が存在します。多くの荷物をつるして運搬できる道具で、玉掛作業者の資格と合わせて取得すると活躍の場が広がるでしょう。なお、移動式クレーンには、陸上だけでなく線路上や水上で運用するものも存在します。移動式クレーンで公道上を走る際は、中型以上の自動車免許も必要です。移動式クレーンの免許は、クレーンのつり上げ荷重で異なります。つり上げ荷重5トン以上のクレーンを扱うためには「移動式クレーン運転士」の免許が必要で、学科・実技の試験に通過することで免許を取得できます。
設備管理に役立つ資格
製造業においては、電気配線やボイラーなど、工場に欠かせない重要設備をトラブルなく使えるように支える仕事も重要です。 ここでは製造業の設備管理に役立つ資格を紹介します。電気工事士
電気工事士は、ビルや工場などで電気工事を行います。電気配線工事や照明の取り付けなどに加えて、製造機械の点検や制御装置の設計などが主な仕事内容です。電気工事士の資格は第一種・第二種に分かれており、第一種であれば最大電力500キロワット未満の建物で工事ができます。製造業の現場で広く電気工事士の資格を生かしたいと考えているのなら、第一種を目指しましょう。
資格取得のためには筆記試験と技能試験に合格する必要がありますが、特定条件を満たせば筆記試験を免除できる場合もあります。
危険物取扱者
ガソリン・硫黄・過酸化水素など、消防法で「危険物」と定められている物質を扱うために必要な資格です。製造業の現場では危険物を使用することも少なくないため、危険物取扱者の資格があれば就職の選択肢が広がるでしょう。危険物取扱者資格には甲種~丙種の3種があり、それぞれ扱える危険物の種類が決まっています。中位にあたる乙種はさらに6類に分かれており、特に第4類(乙4)はガソリンや灯油、軽油などを扱えるため、汎用性が高く人気の資格です。一方、さまざまな危険物を扱う場合も珍しくない製造現場では、甲種の取得が求められる場合もあります。現場で求められる資格をあらかじめ確認しておきましょう。
なお、甲種の受験には学歴や実務経験が必要ですが、乙種・丙種は制限がありません。
ボイラー技士
工場やビルなどでの空調・温水供給に役立つボイラーは、取り扱いに資格が求められます。稼働中に高温を発するボイラーは、正常に稼働していないと大事故につながる恐れがあるため、ボイラー技士はボイラーを適切に運用・管理・メンテナンスしなくてはなりません。ボイラー技士の資格は特級~2級があり、扱えるボイラーの大きさに差があります。工場で使用されるボイラーの多くは1級から扱える規模のもののため、1級資格の取得を目標にすると良いでしょう。なお、1級試験を受けるためには、学歴・実務経験に加えて2級資格の所持が条件に含まれます。
製造業で資格を取得するメリット
製造業で働くにあたり、資格を取得しているといくつかのメリットを享受することができます。特に長く勤めたいと考えている方は、将来の自分に対する投資と考えて積極的に資格取得を目指してみましょう。ここでは 製造業における資格取得のメリットについて解説します。給料がアップする
多くの製造業者が、資格を持っている従業員に対して資格手当を付けています。資格手当の相場は毎月5,000~10,000円ほどで、資格を所持しているだけで年収が6万~12万円ほど増加することになります。また、給料が増えれば仕事へのモチベーションも上がり、より高い成果を挙げてさらなる昇給が期待できるという好循環にもなりやすいでしょう。資格取得のために一時的にお金がかかる場合もありますが、長期的に見れば資格の有無で収入に大きな差が生まれるかもしれません。
仕事の幅が広がる
資格は自分の実力を客観的に証明してくれるものであり、製造業においては法律上、資格所持者以外が行えない業務も多くあります。そのため、資格を持っていることでより幅広い仕事を担当できるようになるでしょう。キャリアアップできる
資格を持っていると、将来的なキャリアアップの選択肢と可能性が増えます。たとえさまざまな事情から会社の管理職を目指すことが難しくても、現場責任者であれば早くから狙えるかもしれません。また、社内で昇進するだけでなく転職も積極的に考えやすくなります。資格を持っていることで、転職活動でも実力と意欲を評価されやすくなるでしょう。