運送業界は、ECサイトの普及やドライバーの高齢化など、さまざまな原因が重なって深刻な人手不足に悩まされている業界です。かつては走れば走るほど稼ぐことができましたが、法律の改正によってそれができなくなっているという問題点もあります。この記事では、運送業界の人手不足の現状と、その解決方法についてご紹介します。
運送業界の現状
運送業界は、大手運送業を中心に労働環境が注目されるようになったことから、低賃金である上に労働時間が長いという悪いイメージが浸透しています。また、労働時間の増加は、需要の増加以外にも、荷物の積み下ろしにかかる荷待ち時間の長さやトラックの積載率の悪さという、業界ならではの非生産性にも起因しています。
このように、運送業界は慢性的な人手不足に悩まされている業界です。人手不足を改善するためには、労働環境を整えながら新しい労働の担い手を見つけなければなりません。しかし、抜本的な解決に至っていないというのが現状です。
人手不足の原因とは
ここでは、運送業界の人手不足の原因について掘り下げてみていきましょう。[ドライバーの高齢化]
運送業界の人手不足の原因として、まず挙げられるのが「ドライバーの高齢化」です。
運送業界は、他の業界よりも高齢化が進行しているといわれています。平成27年度の総務省による「労働力調査」では、実際に現場で働いているドライバーのうち、約7割が40歳以上というデータが示されています。一方、29歳までの労働者比率は10%に満たない結果となりました。
このような年齢層の歪みが続くことによって、人手不足はさらに深刻になるだろうといわれています。
[ECサイトの普及による仕事量の増加]
運送業界における人手不足の原因の2つ目が、「ECサイトの普及による仕事量の増加」です。
Amazonや楽天といったネットショップが普及し、消費者による買い物が増えたことによって、運送業界の人の仕事量がどんどん増えています。
また、ネットショッピングによって個別の配達が多くなることは、トラックの積載率が悪化することを意味します。さらに、再配達の回数が増えたことによって、配達の効率も下がっている状況です。
[低賃金]
「低賃金」であることも、運商業界の人手不足の原因となっています。
かつて運送業界は、走れば走るほど収入が得られるといわれており、なかには年収1,000万円を超えるドライバーも存在しました。しかし、現在は労働基準法や道路交通法の改正によって、以前のように働くことは困難になっています。
具体的には、労働環境の改善を目的として、運送業界にも「改善基準」という規定が設けられ、「勤務終了から翌日の勤務までは8時間以上休息を取ること」「4時間の走行ごとに30分の休憩を取ること」といったルールが定められました。このことによって、休日数や休憩時間が増えてしまい、収入減につながっています。
また、道路交通法の改正によって、トラックに高速道路90km/hの速度制限が設けられる、駐停車禁止が厳しくなる、など運送業界のドライバーにとっては仕事がしにくい環境になりつつあります。こういったことも、人手不足の原因として挙げられます。
[長時間労働]
労働環境は年々改善されてはいるものの、運送業界の業務環境は依然として過酷です。過酷さを象徴する長時間労働も、運送業界の人手不足の原因となっています。
ドライバーの拘束時間の上限は、原則1日13時間とされています。しかし、人手不足によって個々のドライバーが配送しなくてはいけない荷物の量は増えているので、実際には時間内に業務が完了することはなく、規定業務時間を超過して対応することもしばしばあるようです。
人手不足を解消する方法
では、運送業界の人手不足を解消するにはどうしたら良いのでしょうか。ここでは4つの方法をご紹介します。[採用活動の効率化]
まずは採用活動を強化しましょう。採用活動自体を効率化すれば、少ない時間・少ない人員で多くの求職者に出会うことができ、結果的に多くの人材を迎えられる可能性が高まります。
採用活動の効率化のなかでも、「採用管理ツール」の導入がおすすめです。採用管理ツールとは、複数の求人媒体へ一元化して掲載を行えたり、応募者対応を1つのシステム上で行えたりするもので、導入すれば採用業務全般の管理を簡略化できます。なかにはかなり低コストで導入できるものもあるため、自社に合うツールを検討してみましょう。
[女性ドライバーの採用]
運送業界、特にトラックドライバーの女性比率は、3%以下であるといわれています。大きなポテンシャルを持っている「女性ドライバー」というセグメントに照準を当てることは、労働力を確保するために欠かせません。
女性を本格的に採用したい場合、産休・育休はもちろん、職場の清潔感や負担の軽減などを行って女性でも仕事しやすい環境を積極的に作っていく工夫が必要です。すぐにすべてを整えることは難しいかもしれませんが、長期的な目線で見れば女性だけでなく人材全体の採用増にもつながる施策のため、できるだけ早いうちから着手しましょう。
[クラウドソーシングの活用] 近年では、クラウドソーシングを活用することで個人でも仕事ができるようになっています。運送業界でもクラウドソーシングを活用すれば、専門のドライバーではない個人ドライバーを確保できるようになります。トラック自体を所有しているにも関わらずドライバーが足りていない、という企業は多く、こういった場合にクラウドソーシングを使って個人ドライバーを確保することは非常に有効な手段です。
なお、クラウドソーシングを活用する際は、セキュリティ面の信頼性を高める仕組みを構築しておきましょう。
[物流システムの導入]
トラックの配送ルートをシミュレーションするシステムや倉庫システムがあれば、業務を大幅に効率化できます。システムを使って業務が効率化できれば、担当者1人当たりの負担軽減が見込め、少ない人員でも業務に対応できるようになります。
また、倉庫管理システムを導入すればミスを軽減することができ、作業の品質のばらつきもなくせます。正社員以外の従業員も活躍できるようになり、人手不足がより解消されるでしょう。