新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、日本国内におけるインバウンド集客数は前年比で大幅に減少しています。インバウンドによる恩恵が大きい業界の1つである飲食業においては、大幅な売上減によって厳しい状況に置かれている飲食店が増えているでしょう。一方で、政府は2030年までにインバウンド集客6,000万人を目指すという目標を、現在でも崩さずに掲げています。
実際にインバウンド集客数が回復するまでには、ある程度の時間がかかるでしょう。とはいえ、将来的なインバウンド需要に向けて、準備を進めることは重要です。この記事では、インバウンド需要の獲得に向けて飲食店が実施できる施策を紹介していきます。
コロナ前の訪日外国人観光客数と飲食に消費する割合
2019年までの訪日外国人観光客(インバウンド)は毎年増加を続けており、ピークとなった2019年には約3,200万人まで増加していました。訪日外国人観光客が順調に増加していたことから、政府は2020年に4,000万人、2030年に6,000万人を目指すという目標を2016年の時点で掲げています。実際には、新型コロナウイルスの感染拡大によって旅行を控える人が増加し、2020年における訪日外国人観光客は412万人に留まっている状況です。国連世界観光機関(UNWTO)によると、観光客数が2019年と同等の水準に戻るのは2024年、あるいはそれ以降になるという予想を立てています。
観光庁が公表した調査によると、2019年におけるインバウンドの旅行消費額は4兆8,135億円です。飲食費は総消費額の21.6%を占めており、金額にして1.03兆円に及んでいます。
インバウンド旅行客1人当たりの平均飲食費は約3万5,000円で、買物代、宿泊費に次いで消費額が3番目に多い項目です。インバウンドの旅行消費額は2012年から2019年まで8年連続で伸びていることからも、多くの飲食店にとってインバウンド需要を取り込むことが売上アップにつながる重要な施策だということがわかるでしょう。
コロナ禍は、プレ旅前に当てはまる!
インバウンド観光客の動き方をパターン化した考え方として、「旅マエ」という用語が近年よく用いられています。「旅マエ」は旅行プランの決定から旅行後までの流れの一部を指す言葉です。一連の流れは「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」という形で段階分けされており、各段階に合わせた施策を行うことで、売上を効率的に伸ばすことができます。
旅マエは旅行3ヶ月前辺りを指しており、旅行先を決定してから情報収集を行うまでの期間です。次に、旅ナカは旅行先に滞在し、現地の小売店や飲食店などを利用する時期に相当します。旅アトは帰国後1ヶ月ほどの間、立ち寄った飲食店や小売店などの感想をSNSや口コミサイトなどに投稿する時期です。
一方、旅行先を決定する前の時期は「プレ旅マエ」という言葉で表されており、複数の国から旅行先を比較検討する期間に相当します。新型コロナウイルスの感染拡大によって諸外国への旅行が制限されている現在、将来的に旅行したい国を考えている人は「プレ旅マエ」に当てはまる状況だといえます。
プレ旅マエの人を日本へのインバウンドとして獲得するには、動画配信サービスやSNSといったメディアを用いて、日本に対する興味・関心を効率的に上げたり、認知度を上げたりするための情報を発信することが重要です。
プレ旅マエの今、飲食店ができること
では、旅行先の検討を進める人が多くなっている今の時代において、インバウンドの獲得に向けて飲食店はどのような施策を行うべきなのでしょうか。まず、お店にインバウンド観光客がどの程度来店しているかを確認することから始めましょう。その際、観光客の出身地を把握することで、ターゲット層を絞りこんでプロモーションを行いやすくなります。出身地の把握が困難である場合、訪日観光客の多くを占める中国・台湾・韓国などを対象として飲食店のプロモーションを行うことがおすすめです。
次に、ターゲット層とする国のSNSや外国人向けグルメサイトなどに飲食店情報を登録・掲載しましょう。日本への観光を検討するインバウンド観光客が頻繁に目を通すWebサイトやSNSなどに飲食店の情報を掲載すれば、自店の場所や魅力などを効率的に伝えることができます。
最後に、実際にインバウンド向けのプロモーションを実施している飲食店の事例をご紹介します。
大阪の飲食店Kは、ターゲットとする国の旅行サイトで実績のあるインフルエンサーと連携し、飲食店に関する情報を発信しました。具体的には、プレミアムページではクーポンを発行したり、インフルエンサーを招致したりしたそうです。これらの施策によりと知名度とブランド価値の向上を実現し、インバウンド観光客を安定して獲得できるようになりました。