1 導入
アルバイトを雇用している企業数は昔に比べて大きく増加していますが、企業の人事・労務担当の方は、アルバイトにも有給休暇を与えるべきか迷った経験があるかもしれません。結論から言うと、アルバイトにも正社員と同じように有給を与えなければなりませんが、計算の際はいくつかの注意点に気を付ける必要があります。今回の記事では、アルバイトの有給日数の具体的な計算方法や注意点、効率的な計算方法、便利なツールについてご紹介します。2 アルバイトの有給日数を計算する際のポイント
まず、アルバイトの有給日数の計算について、2つのポイントに分けて解説します。2-1 出勤率を調べる
まず、出勤率を調べることが第1のポイントとして挙げられます。労働基準法第39条では、年次有給休暇が付与されるために、全労働日の8割以上の出勤が条件になります。出勤率を算出する式は、(実際に出勤した日数÷全労働日)×100(%)です。「実際に出勤した日数」には、有給休暇・産前産後休業・育児休業・介護休業・労災休業なども換算されます。
アルバイトの場合は、式の「全労働日」の部分を雇用契約で定めた「1週間の所定労働日数」として計算します。雇用契約書に所定労働日数についての記載がない場合は、「1年の所定労働日数」から判断します。
「実際に出勤した日数」とは、算定期間の「全労働日」のうち出勤した日数を指します。また、「全労働日」とは、算定期間の総暦日数から就業規則などで定めた休日を除いた日数を指し、土日が休業日の会社であれば月~金が該当します。
なお、「実際に出勤した日数」は、休日出勤日は除き、遅刻日と早退日も含まれます。就労時間を通しての勤務でなくても出勤日数とみなされるため、注意が必要です。
2-2 所定労働日数・時間・勤続年数に基づき付与する日数を決める
第2のポイントは、有給休暇の日数は「1週間あたりの所定労働日数と所定労働時間」、および「継続勤務年数」から決定するということです。雇用開始から6ヶ月後に最初の有給休暇を与え、以降1年経過ごとに勤続年数に対応した日数が付与されます。なお、有給の日数は、「1週間の所定労働日数」が5日以上、または「1週間の所定労働時間」が30時間以上に達しているかによって変動します。労働条件により細かく規定された表がありますので、厚生労働省のページなどをご参照ください。
3 付与する日数を計算する際の注意点
次に、付与される有給日数を計算する上で注意すべき2つのポイントをご紹介します。3-1 未消化分の繰り越しを忘れないこと
第1に、未消化分の繰り越しについてです。前年度に付与された有給休暇がすべて消化されていない場合、未消化分を繰り越すことができます。そのため、未消化だった分の有給休暇の残日数を把握し、次の年度の付与日数に加算することを忘れてはなりません。
ただし、有給休暇の請求権には労働基準法115条で定められた2年間の時効があるので留意しましょう。
3-2 基準日を変更する際は付与の前倒しを行うこと
第2に、基準日の変更についてです。有給休暇を付与する基準日は、雇用から6ヶ月が経過した後ですが、従業員ごとに基準日がバラバラに異なってしまうため、便宜のため基準日を統一する企業もあります。基準日を後から変更したときは、カットした期間を出勤扱いとみなして有給休暇を付与するのが基本です。
4 効率的な有給付与日数の計算方法
続いて、付与される有給日数の複雑な計算をより効率的に行える2つの方法をご紹介します。4-1 Excelを活用する
第1の方法は、Excelの関数機能を使用して「年次有給休暇取得計画表」を作成することです。Excelには関数計算機能やマクロ機能があるため、1度シートを作成してしまえば、あとは自動で有給日数が計算されます。労働者の雇い入れ年月日のデータから関数処理をすることで、自動的に次回の有給休暇発生日を算出できます。
ただし、管理担当者がExcel操作にある程度精通している必要があり、手作業で入力しなければならない部分も一部生じてしまう方法です。
4-2 勤怠管理システムを活用する
第2の方法は、勤怠管理システムを活用することです。勤怠管理システムを使えば、従業員一人ひとりの勤務情報を一元的に集計・管理でき、そこから自動的に有給日数が計算可能になるため、ヒューマンエラーを防いで業務を効率化できます。正規労働者とアルバイトなど非正規労働者の双方を雇い入れている企業や、労働者の総数が多い企業でも、勤怠管理システムの導入によって人事や労務の管理作業の多くを自動化することが可能です。