少子高齢化やグローバル化の観点から、近年外国人を採用する企業は増加傾向にあります。外国人の採用は、若手人材や海外進出時の戦力が確保できるといったメリットがありますが、一方で言語や文化が異なることによるコミュニケーション問題なども存在します。
そこでこの記事では、外国人採用のメリットや注意点、優秀人材を確保するポイントについてご紹介します。
外国人採用の現状
外国人労働者の採用割合は増加傾向が続いています。厚生労働省による「外国人雇用状況」の届け出状況によれば、外国人労働者数は2019年で約166万人となり、雇用状況の届け出が義務化されて以降最高となっています。この背景には、雇用情勢の改善により「永住者」や「日本人の配偶者」など、身分に基づく在留資格を持つ人々の採用が進んでいることや、技能実習制度の活用によって技能実習生の受け入れと採用が進んでいること、政府が推進する留学生や高度外国人材の受け入れと採用が進んでいることなどが挙げられます。
外国人採用のメリット
では、外国人を採用することで企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。若くて優秀な人材を確保できる
少子高齢化問題が深刻化している日本では、若手人材の確保が課題となっています。若年層の有効求人倍率は極めて高く、採用できたとしても定着率が安定するとは限りません。
その点、海外人材を採用すれば、若手人材が確保できるだけでなく根本的な人手不足の解消にもつながります。特に採用が困難とされている新卒のエンジニアについては、外国人材を採用する企業が増加しているようです。
また、取得が難しいとされている日本語を学び、国境を超えてまで働きたいと考えている人は、優秀で活動力にあふれているケースが多くみられます。そうした労働意欲の高い外国人が他の社員に良い影響を与えて、企業の活力になることも期待できるでしょう。
海外進出のための戦力を確保できる
海外進出を検討している企業は、進出予定地域の出身者を採用することで大きく貢献してもらえるでしょう。現地の言葉や文化をしっかりと知ることによって、マーケティングや情報収集の際に優秀な戦力として活躍が期待できます。
また、多国語に対応できる外国人人材を受け入れることにより、新たなビジネスの創出や外国人顧客との円滑なコミュニケーションの実現などにもつながるでしょう。
外国人ならではの発想力によって会社が活性化する
外国人人材を採用することにより、人種や文化、宗教などさまざまな価値観を社内に取り入れることができるでしょう。今までになかった異なる視点からの意見を参考にすることで、新しいアイデアや課題改善にもつなげることができます。また、自国特有の知識や技術を取り込み、企業の発展に役立てることも可能です。
加えて、外国人人材を採用することによって、ダイバーシティを推進していることをアピールできます。多様性のある企業であることを宣伝することで、新たな人材の確保や事業の展開など、さまざまな利益が得られるでしょう。
外国人を採用する際の注意点
外国人を採用する際には、メリットだけでなく注意点にも目を向けて検討する必要があります。以下で、外国人を採用する際の3つの注意点についてご紹介します。①コミュニケーションの問題
現在、外国人を対象とした求人はあまり多くありません。その理由は、日本企業が求める日本語力と就労を望む外国人の日本語力にギャップがあることが大きな要因です。
日本企業の多くが、日本語を使ったコミュニケーションを条件に外国人雇用を進めようとしているのが現状でしょう。しかし、ビジネスシーンでも支障が出ない程度の日本語力を持つ人材は、企業に求める待遇も高く、マッチングが難しい状態にあるのです。
また、文化の違いからコミュニケーションに齟齬が生じることもあります。日本人は察する力が高いといわれますが、採用する外国人に同程度を期待できるとは限らないでしょう。そのため、「言わなくても分かってもらえるだろう」という意識が認識のずれを引き起こし、重大なミスになりかねません。日本語や文化の理解を労働者だけに求めるよりも、社内でも外国人人材に歩み寄る姿勢を持つことが大切です。
②文化や風習の違い
日本とは文化や風習の違うことも、知っておくべき注意点でしょう。
人前で叱責されることを嫌う、曖昧な表現が伝わりづらい、プライベートを重要視するなど、国によってさまざまな違いがあります。大切なのは日本の常識が必ずしも相手の常識ではないということです。
また、宗教上の理由でお祈りの時間があったり、食べられないものがあったりするなど、社内で周知・配慮する必要がある場合もあります。事前に相手の育った国の文化や信仰に対しての理解を深め、自分の価値観を押し付けないことが重要です。
③雇用手続きの手間
外国人人材の雇用にはハローワークに提出しなければいけない書類があるなど、日本人の雇用と比べると工数がかかることも注意点です。
特に在留資格の申請では、日本国内で就労する外国人の人権を保護するため、審査は慎重に行われ、就労を始めるまでに時間がかかってしまうことがあります。
手続きの手間を可能な限り取り除くには、実績を積み重ねることが大切です。コンプライアンスを遵守し、適正な利益を潤沢に得ている企業であれば、入国管理局から信頼が得られ、比較的簡単なプロセスで外国人を採用できるようになります。
優秀な外国人人材を雇用するポイント
では、優秀な外国人人材を雇用するポイントには、どんなものがあるでしょうか。以下で2つのポイントをご紹介します。①多言語に対応できる社員を育成する
職場を英語が伝わる環境にすることは、優秀な人材を引き込むにあたって重要なポイントです。日本企業は、外国人人材に日本語能力を求める傾向にありますが、それでは外国人労働者の負担が大きくなってしまいます。
少しハードルが高いことですが、外国語が話せる人材を育成したり、社内公用語を英語に変えたりすることで、コミュニケーションにおける問題を解決することができます。
②給与面を中心とした待遇面を改善する
十分な給料を提示することも大切なポイントです。日本は制度面では整ってきてはいるものの、依然外国人労働者への給料が少ない傾向にあります。正社員の場合、外国人の平均月収は4.6万円低いという調査結果も出ています。
高度なスキルを持っていてもそれに見合った給料が得られなければ、外国人労働者は給与の高い別の国へと流れていってしまうでしょう。そうならないように、企業は生産性を上げて収益を増加させ、外国人労働者の能力に見合った給料を支給することが求められます。
まとめ
ますます深刻化する少子高齢化に伴い、外国人人材の採用はより一層活発化するでしょう。外国人労働者が日本企業で長く活躍していくためには、採用後のコミュニケーションの課題解決や、企業のグローバル力を向上させることが望まれます。外国人人材を採用する際には、雇用手続きや社員の育成など、さまざまな手間がかかりますが、多様性を尊重する企業になるためのきっかけとなります。さまざまな注意点を踏まえたうえで、外国人人材の採用を検討しましょう。